Y01 コーヒーカップとティーカップ

 アフタヌーンティー、コーヒーブレイクなど喫茶の楽しみは尽きません。その主役のひとつは、うつわです。カップ&ソーサー、碗皿と訳されたそのうつわには、どんな意味があるのでしょう。
普段よく使う、マグカップという受け皿のないカップ。でも、あらたまった時には「碗皿」です。カップだけでは粗相なので、上品に受け皿をつけてみたのでしょうか?いえいえ、これには深い歴史と意味合いがあるのです。
コーヒー碗皿 共用碗皿 紅茶碗皿

 ヨーロッパの食器は、ほとんどが皿です。やきものができる前、先史時代の食器が木の葉などだったようです。手づかみの食事が長く続いたヨーロッパでは碗よりも皿の方が飲食に都合がよかったのかもしれません。スープなどの液状食物がいまでも皿で供されているのは、その証です。コーヒーとてその例外ではありません。中世の紳士淑女は、コーヒーや紅茶をディッシュ(皿)で召しあがっていたそうです。ディッシュといっても鉢に近いようなもので粗末なつくりでした。
やがてそれに受け皿(ソーサー)が付けられるようになりました。するとお皿が習慣のせいなのか、ディッシュからソーサーに移し変えて飲むようになりました。その後、ディッシュが使いづらいので、ディッシュに把手をつけたカップのようなものができました。カップとソーサー(受皿)が揃った訳です。そのころは「ディッシュ&ソーサー」といわれ、その名はいまでも残っています。しかしそれでも相変わらず受け皿に移して飲まれていました。何ともややこしい面倒な話ですが、慣わしとはすべてこんなものでしょう。そんないきさつから本来は、一組の碗皿は、碗の容量と皿の容量が同じでなければならないのです。この習慣は20世紀初頭まで続いたといわれております。
やがて、コーヒーなどが直接カップから飲まれるようになると、お皿は主役の座を追われ単なるソーサー(受皿)として深さを失い、今日みられるような、とてもコーヒーなど注ぎようもない平らなものになり、おまけにカップの座りが良いように真中にくぼみまでつけられてしまいました。

ひとくちに碗皿といっても、実はコーヒー用のコーヒー碗皿紅茶用のティー碗皿の2種類があります。では、コーヒー碗皿とティー碗皿ではどこがどう違うのでしょうか。


 コーヒー碗皿

コーヒー用とティー(紅茶)用に特に分けへだてをしたのは、イギリスです。

イギリスでは、紅茶は国民的飲料とまでいわれるほど早くから普及し、コーヒーはむしろ嗜好飲料でした。また、イギリスは陶磁器の発達が早く、ヨーロッパのやきもの王国的な生産量がありましたので、自国の国民性によくあったアイテムの開発もたやすかったと思われます。そこで、碗皿を紅茶用とコーヒー用の別にしたわけです。

コーヒー碗皿は、比較的小ぶりで直線的な形が基本となっているようです。コーヒーにはいれかたがいろいろあり、それに適したサイズが豊富です。保温を考えた厚手のものから、見た目にも美しいすっきりとした薄手のものまでつくられています。さらに、コーヒー碗皿には、アフターディナー用の小型のデミタス碗皿、主に朝食用のモーニング碗皿で最近ではアメリカンコーヒーにも利用されている大ぶりなもの、エスプレッソ碗皿など種類があります。


 ティー碗皿
ティー碗皿はカーブのあるフォルムで、口が広く浅いつくりになっております。これは、光をたくさん受けて、紅茶の色を美しく見せるために工夫されたものです。また内絵といって、カップの内側に絵柄が描かれているのは、透き通った紅茶の色を通して見る絵の楽しみと、飲むほどにあざやかに見え出す絵柄を楽しむためのものです。紅茶といえば英国流のアフタヌーンティーというほどですから、イギリス好みのバラの絵柄が多いのも特徴です。紅茶の国イギリス、そのこだわりにはただならぬものがあります。


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